前回の記事では、EZ水と構造水(六角水)の関係や、構造水が体に良いと言われていることの信憑性について取り上げました。今回の記事では、構造水が実際にどのように商品化されているのかについて見ていきたいと思います。
構造水を商品化?
構造水はすでに商品として販売されていて、「structured water」とか「構造水」とかのキーワードで検索すると商品を見ることができます。具体的な商品名は挙げませんが、ボトルに入ったミネラルウォーターのような状態で売られています。英語でも日本語でも、様々な効能が宣伝されていますが、一言で言うと「健康に良い」ということです。
販売されている構造水が本当に健康に良いのかどうかは分かりませんが、これらの商品の問題点は、その水がどのように作られたのかという詳細な説明がなく、その水が構造水だという証明もされていないということです。通常の天然水や蒸留水ではなく、「構造水」と銘打って販売するからには、その水が構造水だという何らかの証拠やデータを示すべきではないでしょうか。
構造水を作る装置?
構造水を作ることができるという装置も多く販売されています。そのほとんどは、水道管の途中に取り付けたり、蛇口に取り付けたりして、その装置の中に水を通過させることによって、水を構造化させるというものです。
たくさんあるのでここでも具体的な商品名は挙げませんが、やはり問題点としては、作られた水が構造水であるという明確な証拠が示されていないことでしょう。「これを使えば構造水ができる」と言うのは簡単ですが、その装置を使うことによって実際に水の性質がどのように変わるのかということや、水がどれくらい構造化しているのかということなどを示さなければ、消費者としてはなかなか購入する気にはなれません。
そんな中、水質の変化をはっきりと提示している製品がありました。The Wellness Enterprise社のAqua Energizersという製品なのですが、石英ガラスの丸い玉が詰められた管に水を通すことによって構造水が出来るらしく、その管を通す前後で水質(塩素やpH、亜硝酸、硝酸など)がどのように変わったのかを写真で載せています。
しかしながら、この測定はかなりずさんで信用できないと言わざるを得ないでしょう。なぜなら測定の精度が低すぎるからです。普通の感覚で考えて、石英ガラスが詰められた管に水を通しただけで、pHや硝酸イオン濃度などの水質が大きく変化すると思いますか?渓谷を流れる川の水質が急に変化したりはしないことからも想像できますが、管に水を通すだけで水質がそれほど変化するとは思えませんし、変化したとしても、非常にわずかな変化のはずで、そのわずかな変化を検出しようとすれば、高度な測定装置を使わなければいけないでしょう。写真にあるような簡易の測定キット(理科の実験で使うリトマス試験紙のようなもの)では、検出できるはずがないのです。写真を見ると、例えばpHは9から10に増加したと書かれていますが、その差は全く分かりません。
製品の信憑性・信頼性を決める大事な測定なわけですから、もっと精度の高い測定を行うべきではないでしょうか。数万円程度のpH測定器を購入すれば、0.01の精度で測定できるのに、それをしていないというのは、逆に製品の信用度を落としているような気がしてしまいます。
渦巻き水(vortexed water)とは?
構造水を作ることができると宣伝されている製品でよく目にするのは、「vortex」(渦を巻く)という言葉です。その装置の中で水が渦を巻くように流れ、そこを通った水(vortexed water)が構造水になるというものです。
この渦を巻いている水、あるいは渦巻きを経験した水(本記事では両方とも「渦巻き水」と呼ぶことにします)というのは、ヴィクター・シャウベルガー(Victor Schauberger)氏による水の螺旋運動に関する理論から来ていると思われます。シャウベルガー氏(1885ー1958年)はオーストリアの自然科学者で、自然界の水に関する様々な発見をしたり、理論を提唱したりして、「水の魔術師」とも呼ばれている人です。詳細は以下の本でご覧になれます。
シャウベルガー氏の発見や洞察は非常に興味深いものですが、「渦巻き水」のことを「構造水」と呼んでいたわけではなさそうです。「自然は脈動する」の原書(英語)でも、「構造水」という言葉は一言も使われていませんでした。
おそらく、渦巻き水を作る製品のメーカーが、渦巻き水のことを構造化された水、つまり構造水と呼ぶようになったのではないでしょうか。
結局、構造水とは何か?
前回と今回の記事で、構造水について様々な角度から見てきましたが、分かったことは「これが構造水だ」というはっきりとした定義は、少なくとも今のところはなさそうだということです。
Atla社という浄水器メーカーの構造水に関する記事には、次のような注意書きがありました。
「構造水」という言葉は科学的に定義されたものではなく、多くの会社や製品は構造水を作れると称しているだけです。我が社が構造水という言葉を使うのは、自然の中で見られる水分子の特定の構造を指すときだけです。ポラック博士も自分達が発見した水を構造水とは呼んでいませんが(EZ水と呼んでいます)、自然界や私たちの体内などのあらゆる所に存在するという点では、我が社が作ろうとしている水とまさに同じものなのです。「構造水」という言葉を使いたくはありませんが、構造水を求めている人たちは我が社の製品Atla Waterに大変満足しています。
Atla社のHPより
「構造水という言葉は科学的に定義されたものではない」という部分が現状を端的に表していると思います。
今回調べてみて、出てきた構造水を大きく分類すると、
- EZ水 (Exclusion Zone water)
- 磁化水 (Magnetized water)
- 渦巻き水 (Vortexed water)
などがあり、これらに当てはまらない構造水もあります。概念図としては以下のようになるでしょうか。
それぞれの円が多少重なっているのは、2つ(あるいは3つ?)の構造水の特性を同時に持つ水も存在するだろうという意味です。例えば、渦を巻く水がEZ水を生成させるかもしれないということは、ポラック博士が著書「The Fourth Phase of Water(第4の水の相)」の中で書いていますし、また、最近の研究では磁場がEZ水の生成を促進することも報告されています。
構造水に関する製品を売り出しているメーカーは、「これで構造水が作れる」とか「これが構造水だ」と宣伝していますが、その構造水とは一体何なのか(上の概念図のどの部分に該当する水なのか)ということに注目すると、その水の特性を理解しやすくなると思います。