太陽光発電住宅の電磁波をモニタリングしてみた:分電盤と計測ユニット

電気

最近、私はソーラーパネルが屋根の上に乗ったオール電化住宅に一時的に滞在していて、いい機会なので、オール電化住宅内の電磁波環境を調べてみようと思いました。

測定に使用する電磁波測定器はGQ Electronics社のEMF-390で、スペックの詳細やモニタリング機能については以前の記事でご紹介しました。

また、電場・磁場・電波の基本については、以下の記事を参考にして下さい。

分電盤と計測ユニットとは?

今回注目したいのは、住宅内に取り付けられた分電盤と計測ユニットです。太陽光発電住宅のシステムをすごく簡単に説明すると、ソーラーパネルで発電された電流は、まずパワーコンディショナーを通して直流から交流に変換されます。


https://socialsolution.omron.com/jp/ja/products_service/energy/product/img/kp-index/img_solar-power_system.jpg

交流に変換された電気は、分電盤で複数の回路に分けられ、家庭内の電気配線に送られます。

住宅分電盤は電気の見張り役

住宅分電盤に入った電気は、いくつかのブレーカーを経由します。最初にリミッター、次に主幹ブレーカーを通り、最後に分岐ブレーカーで各回路に振り分けられます。これらブレーカーは、常に電気の流れを見張っており、漏電など電気の異常を検知した際、自動的に電気を遮断し、大事故を防いでくれます。それぞれのブレーカーは役割が決まっていて、安全性を高める様々な機能が付いています。

PanasonicのHPより

そして、発電量や電力消費量を計測するのが計測ユニットと呼ばれる装置です。計測ユニットから無線電波で情報が送られることによって、家の中のモニターで発電量や消費量を簡単に確認することができます。

現在私が滞在している住宅では、分電盤と計測ユニットが浴室の隣の部屋に設置されています。電磁波測定器をかざすと、これらの計器から電場・磁場・電波(高周波電磁波)の全てが発生していることが分かりましたので、EMF-390を使ってそれらの強度をモニタリングしてみることにしました。

モニタリングしたのは2023年1月某日の朝9時から夜8時半くらいまでで、この間は外出していて家には誰もいませんでした。エアコンや照明器具の電源はすべて切り、Wifiルーターのプラグもコンセントから抜きました。家の中で電源が入っていた電化製品は冷蔵庫くらいです。この状態で、電磁波測定器EMF-390を分電盤と計測ユニットから約1.5メートル離れた場所に立てて置き、電磁波のモニタリングを行いました。

電場のモニタリング結果

電場(Electrid field、EF)のモニタリング結果です。一日を通してほぼ同じくらいの強度の電場が観測されました。例として、朝10時から10時半までを拡大してみても、ほぼ一定の強度であることが分かります。分電盤や計測ユニットにかかっていた電圧は、一日中ほぼ一定だったということです。

磁場のモニタリング結果

次に磁場(Magnetic field, MF)のモニタリング結果です。こちらは一日の中で明らかな変化が見られました。朝9時から磁場は徐々に増加し、午後1時くらいでピークに達します。その後夕方にかけて減少し、午後5時以降はゼロになりました。この「山型」の磁場変化は、おそらくソーラーパネルの発電量に関係しているのではないかと思います。この日は天気が良く、ほとんどの時間帯で太陽が出ていたので、太陽が高くなる昼頃に発電量が最も高かったことが想像できます。発電量が大きくなるほど、強い交流電流が分電盤に流れ込み、磁場の上昇につながったのではないでしょうか。

たまに磁場が急低下しているのは、一時的に太陽が雲で隠れ、発電量が低下したためではないかと考えられます。急低下する前後に、「山型」から飛び出すような少し高い値が出ていますが、この理由は分かりません。

電波のモニタリング結果

最後に電波(Radio frequency, RF)です。詳細を見るために、朝10時から10時半までの拡大グラフも示します。

拡大グラフの方が分かりやすいですが、電波の強さには三段階あることが分かります。時間的に一番長いのは、0から2 mW/m2くらいの弱い電波ですが、不定期的に少し強い電波が発せられています。13 mW/m2くらいの電波が5分間に10回くらい、20から50 mW/m2くらいの強めの電波が10分間に5回くらいです。ただし、この強めの電波は午後3時から7時くらいの間はほとんど検出されませんでした。

EMF-390には、測定値から推測される電磁波の発信源を推定する機能がありまして、例えば、「Power Line(電線)」、「WiFi/Phone(Wifi/携帯電話)」、 「Cell Tower(携帯電話基地局)」、「Microwave(電子レンジ)」、 「Static(静電気)」、「AC EF(交流電源)」などと表示されます。電磁波のモニタリングデータをPCにダウンロードすると、この推定発信源も同じデータファイルに記載されます。

それによると、今回モニタリングした時間の中で最も頻度が高かった発信源は、「Wifi/Phone」または「Mixed」(いくつかの電磁波の混合)でした。ここから推測すると、今回検出された電波(高周波電磁波)は、分電盤の隣に設置された計測ユニットから発せられたものではないかと思います。計測ユニットから情報が送られているモニター(発電量や電力消費量などを確認できる)の電源は切っていましたが、計測ユニットは電波を一日中送信し続けていたのでしょう。

まとめ

今回検出された電場・磁場・電波(高周波電磁波)のなかで最も気になりそうなのは、日中の発電時間帯の磁場でしょう。この時間帯の磁場は、日本電磁波協会のセーフティガイドラインに示されている磁場の基準値(2.5 mG)を上回っていました。

今回の測定は分電盤や計測ユニットから1.5メートルくらいの近距離で行ったもので、距離が離れれば磁場も電場も大きく減少するはずなので、分電盤の近くにいる時間が短い方にとっては、ほとんど影響がない(ことになっている)レベルです。

しかしながら、住宅内の分電盤の位置の関係上、その近くに長く滞在しなければならないような方は、日中の発電時間帯に安全基準を上回るような磁場(低周波電磁波)が発生しているかもしれないということを知っておいた方が良いと思います。

電磁波のモニタリングに興味がある方は、ぜひEMF-390を購入して試してみて下さい。

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