電磁波の基本:電場・磁場・無線周波数とは?

電気

近年は電磁波や5Gといった電気に関する話題をよく目にするようになりました。とりわけ、新型コロナ問題が始まってから、身の回りの電磁波を心配するようになった人も多いのではないでしょうか。

コロナと電磁波の関係についてはまた別の機会に書きたいと思いますが、今日は電磁波問題を考える上で理解しておきたい、電場・磁場・電磁波・周波数などの用語について簡単にご紹介したいと思います。

電場と磁場

まず電場(あるいは電界、electric field、略してEF)というのは、電圧がかかっている場所です。電気が流れている金属線にはもちろん電圧がかかっていますが、金属線だけでなくその周囲の空間にも電場が発生します。送電線や電化製品はもちろんのこと、体が帯びる静電気でさえも電場を発生させ、周囲の空間に何らかの電気的な力を及ぼしています。

電化製品はコンセントにプラグを挿し込んだ時点で、電源をONにしなくても電場は発生します。電場の影響をなるべく受けないようにするためには、使わないときは電化製品のプラグを抜いておくことが重要です。

出典:中国電力ネットワークHP

次に、磁場(あるいは磁界、magnetic field、略してMF)というのは磁力が働く空間のことで、磁石に付く砂鉄などをイメージすれば分かりやすいのではないでしょうか。

電流が流れると、その周囲には磁場が発生しますし、逆に磁場をかけることによって電流を流すこともできます。中学校の理科で習った右手の法則(右ねじの法則)ですね。

電磁波とは?

このように電場と磁場(あるいは電場と磁場、電気と磁気)というのは密接に関係しています。電流の強さや向きが変わるとそれに伴って磁場も変化するので、電場と磁場の影響が交互に(波のように)周囲の空間に伝わることになります(電磁波)。つまり電磁波とは、「電場と磁場の波」ということです。

出典:東京電力パワーグリッドHP

直流電流(Direct Current、DC)では、一定の大きさの電流が常に同じ方向に流れるので、周囲の磁場も安定していて電磁波(電場と磁場の波)は発生しませんが、電場と磁場は発生しています。

一方、家庭用のコンセントから得られる電気は交流電流(Alternating Current、AC)で、電流の向きが周期的に入れ替わるので、電場や磁場の変化が起こり、これが電磁波となって周囲に伝わります。

ただ、コンセントにつなぐ電化製品にも2種類あって、交流電流をそのまま使う製品と交流電流を直流電流に変換して使う製品があります。ノートパソコンやWifiルーターなどは、ACアダプターを通して交流電流を直流電流に変換してから、電流が機器に送られています。「ということは、ACアダプターが付いている電子機器からは電磁波は発生しないの?」と思われるかもしれませんが、電気が流れている以上、電場と磁場は発生しています。

直流と交流の違いやメリット・デメリットは、松定プレシジョンに詳しく書かれています。

家電製品からの電磁波による健康被害が心配されていますが、これは「電磁波」というよりも、「電場と磁場」と言い換えたほうが分かりやすいと思います。直流・交流を問わず、配線を通して電気が流れている電気設備からは「電場と磁場」が発生していて、電磁波測定器を使えばこの電場と磁場を測定することができます。

有線の電気設備は、「電場(EF)」と「磁場(MF)」に注目

電波(高周波電磁波)

一方、携帯電話やWifi、Bluetooth、衛星放送などで利用される、いわゆる「電波」と呼ばれるものは、送電線を通して送られてくる電気よりも周波数が高く、電場と磁場の波が細かいのが特徴です(高周波電磁波)。

例えば送電線から送られる電気の周波数は50Hz(東日本)または60Hz(西日本)であるのに対し、携帯電話で利用する電波の周波数は数GHz(ギガヘルツ)ですから、波の細かさは1億分の1(1/100,000,000)くらいになります。波が細かくなるほど、伝達できる情報量が多くなるため、高周波の電波は通信によく使われるわけです。

出典:総務省HP

高周波の電磁波は波が細かく、電場と磁場を分けて測定できないので、それらを合わせた電磁波の集中度(電力密度、放射密度)として計測されます。市販の電磁波測定器では、この集中度はRadio Frequency (RF、無線周波数)と表記されていることが多いと思いますが、これは電波の強さ(電波強度、電力密度)を意味します。つまり、携帯電話やWifiの電波を気にするときは、このRF(電波強度)に注目するということです。

無線電波(高周波電磁波)は、電波強度(RF)に注目

電磁波の測定に興味がある方は、自分が心配しているのは有線設備から来る電場・磁場なのか、無線設備から来る電波なのかをはっきりさせ、目的に合った電磁波測定器を選ぶことが重要ですね。次回は電磁波測定器の比較を行なっていきたいと思います。