前回の記事に引き続き、今回も太陽光発電住宅の電磁波をモニタリングしてみたいと思います。
今回注目するのは、太陽光発電システムにとって必要不可欠な装置である、パワーコンディショナー(パワコン)です。インバーター(Inverter)やPCS(Power Conditioning System)とも呼ばれるそうです(PanasonicのHP)。
ソーラーパネルで作られる電気は直流電流のため、そのままでは家庭用の電化製品に使用することはできません。作られた電気を家庭で使用できるように、直流電流を交流電流に変換するのがパワーコンディショナーの大きな役割です。
他にも、発電量が最大になるように電流と電圧を調整したり(最大電力追従制御)、発電した電気を売電するために電力会社へ送電したり(逆潮流制御機能)、過電圧や電圧不足、系統電力の停電などを検知して、太陽光発電システムを電力会社の電気系統から切り離したり(系統連系保護機能)と、パワコンには様々な機能があります。
今回は、そんな太陽光発電システムの心臓部とも言えるパワコンから、どれくらいの電磁波が発生しているのかについて注目してみます。
現在、私が一時的に滞在している太陽光発電住宅では、パワコンが屋外に設置されているのですが、その壁のちょうど反対側(屋内側)は寝室になっています。寝室やリビングは長時間滞在する場所なので、パワコン由来の電磁波が屋内まで来ていないかどうか気になりますよね。
そこで、2023年1月某日に、パワコンが設置されている壁の屋内側で、壁から2センチくらい離れた場所の電磁波(電場・磁場・電波)を、日中から夕方にかけてモニタリングしてみました。電磁波測定器は前回と同じく、EMF-390を使いました。EMF-390の特徴や機能については、以下の記事をご覧ください。
一日目の結果
この日は朝から天気が悪く、午前中はずっと曇っていたので、おそらくソーラーパネルはほとんど発電していなかったと思います。そのためか、磁場の強度は正午過ぎまでおおむね1 mG(ミリガウス)以下でした。
午後からは、雲が薄らいできて、時折日差しも感じることができました。それに合わせるように、磁場も波打ちながら増加していき、午後2時から3時の間には50から60 mGに達することもありました。残念ながら、この日は午後3時半くらいに測定器がバッテリー切れになってしまい、そこでモニタリングは終了しました。
電場と電波(高周波電磁波)は、一日中ほとんどゼロに近い値でしたが、電場は午後から若干の増加傾向を示しました。値としては1 V/m程度なので、家庭内の電化製品と比べれば無視できるほど小さい値です。
家庭内の電化製品からの電磁波については、こちらの記事をご覧ください。
この日は午前中の発電量が少なかったため、午後からの発電量を増加させるために、パワコンにかかる電圧が自動的に増加したためではないかと思います(最大電力点追従制御)。電圧を増加させれば、ソーラーパネルからパワコンに流れ込む電流が小さくても、発生する電力(電圧×電流)を大きくすることができるからです。
二日目の結果
この日は朝から天気が良く、ソーラーパネルが一日中発電してくれそうな日でした。磁場の値は午前10時くらいからどんどん増加していき、正午から午後1時くらいにピークの60 mGくらいに達します。その後は徐々に減少していき、午後5時半以降はゼロになりました(図では午後6時まで示していますが、実際には午後7時半くらいまでモニタリングしていました)。
電場と電波(高周波電磁波)は、一日中ほとんどゼロに近い値でした。一日目に見られたような電場の増加も見られませんでした。
二日間のモニタリングから言えることは、発生する磁場の強さは、おそらくソーラーパネルの発電量に関係しているだろうということです。朝は低く、正午にかけて徐々に高くなり、午後は減少していき、日没以降はゼロになったからです。ソーラーパネルが効率良く発電するほど、パワコンに強い電流が流れるので、それに応じた強い磁場が発生するということです。電流と磁場の基本については、こちらの記事でご紹介しました。
まとめ
今回は、太陽光発電住宅のパワコンから発せられる電磁波に注目しました。その結果、屋内の壁から2センチくらい離れた場所で、日中の発電量が多い時間帯に最大60 mGくらいの磁場を検出しました。
この値は、一般的な磁場の基準値を大きく上回りますが(日本電磁波協会)、磁場も電場も発生源からの距離が離れれば大きく減少します。今回の測定値は、あくまで壁付近の値であり、実際の生活空間の値ではないことにご注意ください。
また、夜間にソーラーパネルが発電していないときは、磁場も発生していないことが分かりました。
つまり、注意しなければいけないのは、昼間にパワコンの近くに長時間滞在するような場合です。パワコンがリビングの外壁に取り付けられている場合は、なるべくその壁から離れてくつろいだ方が良いと思います。