六角水や六員環構造水という言葉を聞いたことはあるでしょうか?健康に良いとか、水の第4の相とか、それに関する話題は以前から耳にしていました。六角水を作ることができるという製品も海外では結構販売されていて、ネットで検索すると色々と見つかります。しかし、各製品の特徴をきちんと理解しようとすると、やはり六角水についての基本的な知識を持っていないとダメだなと思い、六角水とは何なのか調べてみようと思いました。
ところが、いざ調べようとすると、ネット上には様々な情報が入り乱れていて、キャッチーな情報(体に良いとか)だけで詳細には触れていなかったり、サイトによって説明が違っていたりして、どれもしっくりこないものばかりでした。
六角水のことを調べると必ずと言っていいくらい出てくる名前が、構造水研究の第一人者とも言えるジェラルド・ポラック博士です(ただし、ポラック博士自身は「六角水」とか「六員環構造水」という言葉は使わず、下に出てくるように「EZ水」と言っています)。六角水とは何なのかを知るためには、このポラック博士の話を直接聞いてみるのが一番だと思いまして、Youtube上にあった彼の講演をいくつか聞いてみました。
そのなかで最も最近の講演は、2019年にドイツで行われており、「水の第4相」というタイトルで1時間くらい話していました。こちらがその動画です。
今回の記事では、ポラック博士のこの講演内容を分かりやすくまとめ、六角水の基本(原点)について理解を深めたいと思います。
EZ水(Exclusion Zone Water)の発見
ポラック博士たちがまず最初に注目したのは、水が親水性の物質に触れるとき、その物質の表面付近では水が微粒子を排除するという現象でした。微粒子を混ぜた水を親水性の素材に触れさせると、その接触面から粒子が離れ、水だけの層が観察できたのです。その厚さは素材の種類や実験条件にもよりますが、0.05 mm(ミリメートル)とか、0.5 mmとかでした。0.5 mmだと肉眼でも確認できるくらいですね。
この現象自体は、1970年代に他の研究者がすでに発見していたようですが、きちんと命名して発表してはどうかと同僚に言われ、ポラック博士はこの薄い水の層をExclusion Zone (EZ)Water (以下、EZ水)と命名して発表しました。Exclusionというのは排除という意味で、EZは水が他の粒子を排除する領域という意味です。EZ水は英語では”イーズィーウォーター”と発音します。
いわゆる「六角水」とか「六員環構造水」の原点はこのEZ水なのですが、ポラック博士自身は「六角水」や「六員環構造水」という言葉は使っていません。本記事でも、ポラック博士の言葉通り、「EZ水」という言葉を使いたいと思います。
論文検索サイトで調べてみたのですが、この「EZ水」という言葉が初めて使われた(論文として発表された)のは2009年のことで、ポラック博士自身が「Water and surfaces: a linkage unexpectedly profound」というタイトルで発表しています。
すべての物質の表面でEZ水が見られるわけではなかったので、博士たちは様々な素材を使って実験しました。その結果、EZ水は多くの親水性物質の表面(例えばゲルやポリマー、生物の表面など)に見られ、そこでは細菌やタンパク質などの非常に小さな粒子まで排除されることが分かったのです。
EZ水の特性とは?
その後研究を重ね、EZ水の様々な物理的・化学的特性が分かってきます。具体的には、EZ水をEZ外の水と比べると、
- EZ内の水分子は動きが制限されている
- EZ内の水分子は安定している
- EZ水は負の電荷を帯びている
- EZ水は波長270nmの光(紫外線)を吸収する
- EZ水は粘性が高い
- EZ内の水分子は整列している
- EZ水は分子構造が異なる
- EZ水は光学特性が異なる
ということなどが分かってきました。
水には固体・液体・気体という3つの相(状態)がありますが、次々と分かってくるEZ水の特性から、EZ水は「水の第4相」ではないかとポラック博士たちは考えるようになります。実は似たような議論、つまり水には第4の相があるのではないかというのは、100年以上前にウィリアム・ハーディー卿によって提唱されていたとのことです。おそらく「The general theory of colloidal solution」というタイトルの論文で、1912年に出版されています。
ポラック博士いわく、「水には第4の相があるという私たちのアイデアは、全く急進的なものではなく、古くからあるものです。私たちはただ証拠を見つけただけです。」
EZ水の構造は?
EZ水の分子構造は、酸素原子が六角形に配置された水分子の薄い層がたくさん重なっているようなイメージで、化学式はH3O2が提唱されています。先ほど挙げたように、EZ水の特徴の一つは負の電荷を帯びているということなので、従来の水の化学式H2O(電気的に中性)では説明がつきません。酸素原子が少し多めに入ったH3O2だと、EZ水が負の電荷を帯びることと辻褄が合うわけです。六角水とか六員環構造水という名前は、このように酸素原子が六角形に配置されていることに由来します。
ポラック博士の同僚であるエリア博士は、このEZ水だけを集めて通常の水の中に入れると、もやもやした雲のように見えることを発見しました。
さらにここから、凍結乾燥という特殊な方法でEZ水以外の水を除去すると、固体状のEZ水の膜ができたそうで、これは言い換えれば、常温で固体の水が得られたということです。
EZ水は記憶する?
続いて講演は、EZ水は記憶する能力があるかどうかという話題に入っていきます。通常の記憶装置(例えばUSBメモリーやHDD、SSDなど)では、半導体を使って情報を0か1の二進法で変換しながら記憶しています。半導体には、現在のところ純度の高いシリコン(ケイ素)が主に使われていますが、どうやらこのシリコンの代わりとしてEZ水(の結晶)が使えるのではないかと博士たちは考えているようです。詳しくは説明されていなかったので、この部分は私もしっくり来ませんでしたが、ここで言われている「水の記憶」とは、EZ水の結晶を半導体の素材として利用できるのではないか、という意味です。
ここでポラック博士が関連情報として取り上げていたのは、江本勝氏の実験です。江本氏は株式会社IHMの創業者で、水や波動について研究していました(2014年に逝去)。詳しくは著書「水からの伝言」や「水は答えを知っている」をご覧ください。
ここで取り上げられていたのは、水に音楽や言葉を聴かせると、その水の結晶の形は音楽や言葉によって変化するという江本氏の観察です。「多くの科学者は疑うだろうけど、判断はお任せします。」とポラック博士。博士自身は科学的にあり得ると考えているのでしょう。
EZ水のエネルギー源は?
続いての話題は、このEZ水にエネルギーを供給しているのは何かということです。物質がある状態を形成するとき、あるいはその状態を維持するときには、かならずエネルギーが必要になります。今回のケースで言えば、水が特定の構造を形成し、負電荷を溜め込み、他の微粒子を排除しているわけですから、そのような層(EZ)を形成・維持するためには、何らかのエネルギー源がないと説明がつかないのです。
これに関して、ポラック博士の研究室の学生は、EZに光を当てるとEZが大きくなることを発見します。その後、紫外線や可視光線など、様々な波長の光で試した結果、赤外線が最も効果的だったそうです。このことから、EZの形成・維持には光(特に赤外線)のエネルギーが必要なのではないかと博士たちは考えています。
これを私たちの実生活に広げて考えれば、太陽光を浴びることによって、私たち人間の体内の水もその光エネルギーを吸収し、EZを形成しやすくなるかもしれないということです。
EZ水の効果とは?
ここまでの講演から、EZ水の構造や形成については分かってきましたが、果たしてこのEZ水は私たちにとって大事なものなのでしょうか?あってもなくても同じなら、私たちの生活にはあまり関係ないということになりますが、このEZ水が私たちすべての生命にとってなぜ重要なのかについて、講演後半で語られます。
ポラック博士の研究室の学生は、チューブ(管)の中にEZが形成されると、外部から圧力を加えなくても、そのチューブの内側に自然に水が流れていることを発見します。違う素材(ゲル)の管も試しましたが、EZが管内に形成されると、やはり水は流れました。さらに光を照射すると、その水の流れは5倍も速くなったそうです。
これと同じようなことが人間の体内で起こっているとすれば、太陽光を浴びることによって、血管内にEZが形成され、それによって血液が流れているのかもしれないということです。
現在の常識では、血液は心臓の拍動によって流れることになっていますので、もしそうではなく、太陽光が血流を起こしているのだとすれば、これまでの常識が大幅に書き換えられることになりますね。
ここで、興味深い報告があることをポラック博士は取り上げます。イスラエルの研究者たちによれば、実験で解剖したネズミの血流は、心臓が停止した後も1時間は流れ続けていたというのです。何度やっても同じ結果になったそうです。実は同じような報告は過去にいくつもあったそうですが、すべて無視されてきたとのこと。心臓こそが血液を動かしているという科学界の常識がそうさせてきたようですが、これまで世界中の研究者・医学者のほとんど誰もそこに目を向けなかったというのは、教科書で習う「常識」が非常に根深いことを示していますね。実際に起きていることよりも、学校の教科書で習った知識(先入観)を優先させてしまうのです。
その後、ポラック博士のグループは鶏の胚を使って実験を行いました。胚には血流を確認することができますが、薬品を使って強制的に拍動を止めると、血流は一気に下がります。その数分後、赤外線を照射すると血流は増加し、照射を止めると再び低下しました。
ここから言えるのは、心臓だけが血液の流れを起こしているのではなく、血管自体も血流を維持するのに貢献していて、そこに光のエネルギーが大きく関係しているということです。
ポラック博士は、EZが細胞内の代謝にも影響を与えているかもしれないと考えているようです。光のエネルギーによって細胞内にEZが形成され、細胞内が負電荷を帯びることで、細胞を構成するタンパク質が機能しやすくなるのではないかと話していました。
ここまでを少しまとめると、私たちの血流も代謝もEZ水のおかげで、そのEZ水は光からエネルギーを得ているということです。つまり、私たちは食べ物だけではなく、光からもエネルギーを得ているということになります。
体内にEZ水を増やすには?
ここまでを見てくると、体の中に少しでもEZ水を取り入れたり、体内でEZ水を作り出したりしたくなるのではないでしょうか?体の中にEZ水をたくさん保持するコツとして、ポラック博士は以下のことを提案しています。
- 水分を十分に取る
- 野菜ジュースを飲む
- ターメリックやココナッツなど、EZを広げる作用のある食物を取る
- 日光を浴びる
- サウナに入る
- アーシングをする
講演は最後のまとめに入っていきます。
ポラック博士たちはEZ水の様々な物理的・化学的特性を調べてきましたが、それらを総合して、EZ水は他のどの水の相(氷・水・水蒸気)にも属さない、第4の相であるという結論に達したわけです。氷と液体の水の間に、EZ水という水があるのです。水が凍るときは、一度このEZ水になってから凍りますし、逆に氷が溶けるときも、このEZ水を経てから液体の水になります。「雪解け水を使って生活している人たちに長寿で健康な人が多いのは、EZ水を日常的に飲んでいるからかもしれません」と、ポラック博士は述べていました。
まとめ
本記事では、2019年に行われたジェラルド・ポラック博士の1時間の講演内容をまとめてみました。EZ水がそれ以外の水(EZから排除された水)と比べて、化学的・物理的にどのように異なるのかが、かなり分かりやすく語られていたと思います。
講演の最初のほうで、物質の表面にできる1ミリ以下の層と聞いた時は、なんだか非常にミクロな話というか、私たちの実生活にはあまり関係のないような気がしてしまいましたが、最後のほうで、氷が溶ける時にEZ水が形成されると聞いて、EZ水を何となくイメージしやすくなりました。「ああ、氷が溶ける瞬間の水ね」と。
雪解け水が長寿の秘訣かもしれないとポラック博士は言っていましたが、私たちが簡単に手に入れることのできる雪というのは、大気中の様々な有害物質(自動車や工場からの排気ガスなど)を含んでいる可能性があるので、近所の雪を溶かして飲むというのは一概にはお勧めできません。
スライドの画像は含めませんでしたが、ポラック博士は講演の最後に、このEZ水は様々な分野(健康促進や発電技術、気象解明、固体と液体の分離技術など)で応用できるかもしれないと期待を込めて言っていました。次回の記事では、このEZ水が実際にどのように注目され、利用されているのかについて調べてまとめてみたいと思います。