EMF-390を使った電磁波のモニタリング:寝ている間もスマホからはこれだけの電波が!?

枕元のスマホ 電気

前回の記事では、2つの有名な電磁波測定器TF2とEMF-390を実際に使用しながら比較して、「買うならEMF-390」という結論に至りました。

EMF-390には、TF2にはない機能が多くあるのですが、今回の記事ではそのうちの一つ、データのログ機能についてご紹介したいと思います。データのログ機能というのは、刻々と変化する電場や磁場、高周波電磁波などのデータを、測定器に内蔵されているメモリーに自動的に記録していくことができるという機能です。

通常の家電製品は、電源が入っているかいないかがはっきりと分かるので、そこから発せられる電磁波が気になる場合、製品の電源を入れた状態で電場や磁場を測ってみれば、それで済みます。

しかし、自分が意図しないタイミングで、自動的に家電製品の電源が入ったり切れたりしていたらどうでしょうか?あるいは、携帯電話の基地局や衛星から発せられる電波の強度が急に変化したらどうでしょうか?電磁波測定器を常に握りしめて画面を見ていない限り、そのような意図しない電磁波環境の変化を知ることはできません。

そんな時に役に立つのがデータのログ機能です。ログ機能を使えば、測定器の画面をずっと見ていなくても、データが自動的に測定器内に記録されていくので、後でデータを測定器からPCに引き出せば、何時何分にどれくらいの数値だったのか分かるわけです。

EMF-390にはこの便利なログ機能が付いているので、今回は実際にその機能を使ってみたいと思います。

EMF-390の基本的な操作方法や、PC用ソフトウェアのインストール方法などについては、メーカーのHPから日本語マニュアルをダウンロードできるようになっています。「#16 Japanese version EMF meter user guide」のところにある「Download here」をクリックして、マニュアルをご覧ください。ここでは詳細は省略します。

ソフトウェアをインストールした後、測定器(EMF-390)をUSBケーブルでPCに接続して、ソフトウェア画面にある「Auto」ボタンを押すと、PCが測定器を認識します。その後、測定器の電源を入れると、下の画像のように測定器の画面がそのままPC上にも表示されます。この状態が確認できれば初期準備はOKですので、測定器の電源を切り、PCから取り外します。

モニタリングを開始するときは、測定器内の「Main Menu」画面から「Save Data」を選択し、「ON/OFF」を「ON」にします。後で説明しますが、20時間くらい連続してデータを取る場合は測定器内のメモリーが全て使われることになるので、「Save Data」を「ON」にする前に、メモリー内のデータを消去して空っぽにしておきましょう。

寝ている間にスマホから発せられる電波をモニタリング

測定対象として、今回はスマホ(携帯電話)に注目してみました。一日のうち、かなりの時間をスマホの近くで(あるいはスマホを手に持って)過ごされる方も多いと思います。スマホを操作しているとき(例えばネットで記事を読んだり動画を見たりしているとき)に、スマホが電波を使って通信していることは容易に想像がつきますが、スマホを操作していないときやメッセージを受信しないときは、ほとんど電波通信していないと思っている方が多いのではないでしょうか?

そこで、夜寝ている間にスマホがどれくらい電波を発しているのかを、EMF-390のデータログ機能を使ってモニタリングしてみました。就寝前にWifiルーターの電源は切って、ルーター由来の電波をなくし、スマホのすぐ近くに電磁波測定器EMF-390を置くことで、スマホから発せられている電波だけを測定してみました。

午後11時から翌朝7時半までの電波強度です。

RF23-8

グラフを見て分かるのは、スマホは使用していないときでも定期的に電波を発しているということです。ちなみに、この夜にアプリが受信していたメッセージは1通だけでしたので、メッセージを頻繁に受信していたわけではありません。

電場と磁場も同時に記録されますが、これらはずっとゼロのままでした。つまり、上のグラフに示した電波は、スマホ以外の家電製品の影響を受けたものではないと考えられます。

今回の約8時間半の連続測定で、EMF-390のバッテリーは14%消費し、メモリーは41%使われていました。メモリー使用量から単純に計算すると、最長で約21時間の連続測定が可能ということになります。

電波強度は?

電波の強度(電力密度)は、500から800 mW/m2くらいが頻繁に確認されます。

この強度がどれくらいかというと、今私が使っている据え置き型Wifiルーターのすぐそばで確認された電波と同じか、それよりも強いくらいです。

また、今回確認された最大値891 mW/m2というのは、電子レンジの「あたため」中に、電子レンジのすぐ隣で確認された高周波電磁波(1100 mW/m2)に匹敵するくらいの強度です。

様々な電子機器の周辺で電磁波を測定した過去記事がありますので、まだご覧になっていない方はこちらもご覧ください。

電波を発信する頻度は?

次に、この強い電波が発せられる頻度に注目してみましょう。

上のグラフを見ると、全ての時間帯で同じような頻度で発信されていることが分かりますが、参考までに午前2時から4時の間を拡大してみました。1時間に12回くらい(5分に1回くらい)定期的に発信されている様子が分かります。

RF2-4

午前3時過ぎの拡大です。強い電波が発信されるのは1回あたり17、18秒間くらいです。

RF300-315

このようにスマホから定期的に電波が発信されるのは、電話を受けるためにそのスマホの位置を知らせるという目的があるようです。

携帯電話は自分から定期的に電波を発信して、自分の居場所を知らせる信号を発信しており、その信号を受信したアンテナから情報が端末データベースに送られています。電話がかかってきた時は、移動体交換局が端末データベースを検索して携帯電話の居場所を探し、そのエリアの無線制御局に呼び出し信号を送ります。無線制御局では自局管轄内のアンテナから一斉に呼び出し信号を送出します。携帯電話は最寄のアンテナから信号を受け取り、呼び出しが実際に行われます。

TDKのHPより「携帯電話の通話の仕組み 〜なぜ輻輳が起きるのか〜」

しかしながら、スマホには電話の他にも様々なアプリが入っているので、それらのアプリが何かしらの情報を定期的に外部に送ることも、少なくとも技術的には簡単なことでしょう。

まとめ

今回の記事では、EMF-390のデータログ機能を実際に使ってみました。夜間にスマホ付近の電波をモニタリングして分かったのは、意外と頻繁に(5分に1回くらい)非常に強い電波が発せられているということです。

就寝中、スマホを枕元に置いて寝ている人も多いと思いますが、これは枕元に電子レンジを置いて、あなたが寝ている間に誰かが5分に1回「あたため」ボタンを押しているようなものです(電子レンジでは電場と磁場も発生するのに対し、スマホではそれらはほとんど発生していなかったので、全く同じではありませんが)。1回あたりの電波発信時間は17、18秒くらいですが、あまり気持ちのいいものではありませんね。

今回は、操作していない時のスマホからの電波を測定したかったので、夜間の電波発信状況を調べてみましたが、昼間でも同じことが言えると思います。ましてやアプリなどを操作しているときは、当然電波を発信する頻度も高くなることでしょう。スマホからの電磁波の影響を最小限にするために、スマホを使用しないときはなるべく体から離しておきたいものですね。